本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

親にでも書ける読書感想文(芥川龍之介編その6)

「四谷でーすか」です。

『トロッコ』もいよいよ佳境です。

起承転結でいう「転」。 

作者の言葉づかいがささくれ立ってきたことに留意してください。

竹藪、雑木林、爪先上り、赤錆、高い崖、枝。。

牧歌的な時代は終わりました。

 

竹藪のある所へ来ると、トロッコは静かに走るのをめた。三人は又前のように、重いトロッコを押し始めた。竹藪は何時か雑木林になった。爪先つまさき上りの所々には、赤錆あかさびの線路も見えない程、落葉のたまっている場所もあった。その路をやっと登り切ったら、今度は高い崖の向うに、広広と薄ら寒い海が開けた。と同時に良平の頭には、余り遠く来過ぎた事が、急にはっきりと感じられた。
 三人は又トロッコへ乗った。車は海をにしながら、雑木の枝の下を走って行った。しかし良平はさっきのように、面白い気もちにはなれなかった。「もう帰ってくれればい」――彼はそう念じて見た。が、行く所まで行きつかなければ、トロッコも彼等も帰れない事は、勿論もちろん彼にもわかり切っていた。

 

この場面には、読書感想文を書く上で極めて重要なポイントが2つあります。

 

 車は海をにしながら、雑木の枝の下を走って行った。

ここでいう海とは太平洋です。

そうして、海が右に見えるということは、いまトロッコは「上り」、東京方面に向かっているということです。

ここで私達は採点者からあることを求められています。

それは、「芥川がもし、うっかり、帰りのシーンでも『海は右にあった』と書いたら大笑いしてやろう」という気骨です。

だから感想文ではこのように書いておいてください。

往きは右なら、帰りは左だと僕は思います。

 

 面白い気もちにはなれなかった。「もう帰ってくれればい」彼はそう念じて見た。

この「も」も考察に値します。

良平はなにか他の事念じていた。

良平が念じていた他のこととはなんでしょう?

もう一度、昔みたいに面白い気持ちになりたい、よりを戻したい、みたいなことを念じていたのでしょうか?

それではただの演歌です。

読書感想文に演歌的な要素は含まれるべきでありません。

僕は次のように解釈します。

良平は、「帰りには海は左にあってほしい」と念じていた、と。

我々はここで戦慄します。

良平の恐怖はもはや「自分が帰れないかも」という次元を超えている。

良平は、二人の悪魔によって、どこを向いても海また海という異界に連れていかれたのではと恐怖を感じているのです。

しかし、この解釈はあまりにもハイレベルですね。

先生だって理解できないかもしれません。

といいつつ、なにも触れないのは悔しいから、地球は丸い、とだけ書いておきましょう。

読書感想文では、一個所くらい「減点になってもいいや」といった気骨をみせるべきでなのです。

往きは右なら、帰りは左だと僕は思います。地球は丸い。

いかがですか?

採点者が怪訝な顔をして減点している様子が目に見えますね。

ではまた来週。