本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

親にでも書ける読書感想文(芥川龍之介編その1)

 はじめまして。

夏期講習で国語を担当させていただく「四谷でーすか」です。

夏休みといえば、熱帯もしくは水風呂ですね。

しかし、忘れてはいけません、読書感想文のことを。

期せずして倒置法で始まってしまった、この講義。

今回は芥川龍之介の名作『トロッコ』(青空文庫版)をテキストに取り上げてみましょう。

 

小田原熱海あたみ間に、軽便鉄道敷設ふせつの工事が始まったのは、良平りょうへいの八つの年だった。

 

工事開始は1907年。つまり良平は1899年生まれということになります。

しかし、そんなことは絶対に書いてはいけません。

読書感想文に具体的なデータはいりません。

ちなみに本作品を読めば、ほとんどの人が志賀直哉の『真鶴』を想起することと思います。

『真鶴』は1920年に書かれました。

しかし、そんなことは絶対に書いてはいけません。

読書感想文に文学史の知識はいりません。

 

良平は毎日村はずれへ、その工事を見物に行った。工事を――といったところが、ただロッコで土を運搬する――それが面白さに見に行ったのである。

 

「といったところが」から「それが」の流れが面白いですね

しかし、そんなことは絶対に書いてはいけません。

読書感想文で言語学的アプローチをとってはいけません。

では、なにをかけばいいのだ?と途方に暮れる方もいるでしょう。

勝敗は冒頭で決まります。

僕(もしくは私)は芥川龍之介の『トロッコ』を読んでとても面白かったです。

これに尽きます。

なお、ここで当然我々は、有名な芥川と谷崎潤一郎の論争を想起するわけですが、「話の筋」に重きをおかないという立場をとった芥川の作品が子供に「面白かった」と言い切られてしまう皮肉な味わい。秀逸ですね。

(芥川の『文芸的な、余りに文芸的な』参照のこと)

 

今日のところはこの辺で終わりにしましょう。