本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

柳河岸

大正時代の文豪、末代左中の代表作『柳河岸』の全文です。

随分と歩いたように思ったが、振り返ると拍子が抜けた。
「おい、芳蔵。お前が先に行ってくれないか」
「しかし、先方は旦那様を」
「だからそう言っているのだ」
「そういう算段では困ります」
「算段とはどういうことだ」
私は不愉快だったが、芳蔵に対してではなかった。
「しかし、旦那。先日はよろしゅうございましたね」
「なんのことだ」
承知であったが聞き返した。
「お雪様です」
「ああ、あれか。あの後、お前はどうしたのだ」
「水前寺で一杯やってきました」
「誰がいた」
「隣町の伝と勘蔵でございます」
「勘蔵か。変わりなかったか」
「そうですね」
「まだ、続けているのか」
「奉公人を一人雇ったそうです」
「たいしたものだ。今度、顔を出してみよう」
「勘蔵も喜ぶことでしょう。ただ、例の話は」
身内の恥をわざわざ口にするはずがない。
鼻の先に一滴の雨が落ち、あれよといううちに本降りになった。
仕方なく雨宿りしたのが浅賀屋の軒だった。

【解説】
文中に出てくる「お雪」は末代の愛人の愛人だった小浜がモデルとなっている。
愛人の愛人だから、ただの愛人もいたわけだが、それは芳蔵のモデルとなった川谷甚平である。

モデルはモテる

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