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本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

三寒四温

僕の親友、中村代助が言いました。
「春はあけぼの。三寒四温
「突然なんだよ?」
「おまえ、三寒四温、知ってるだろ?」
「なんとなくな」
「なんとなく、はっきり、みたいな感じだろ?」
「なんとなく、はっきり?」
「ああ、なんとなくクリスタル的にさ。三寒四温って間違いなく『三歩進んで二歩下がる』の逆バージョンじゃない。でも、三寒四温って、どういう時に使う?寒い日が連続三日続いたから、明日からは四日連続で温かいぞ、みたいな感じ?」
「いや、それは違う気がする」
「だろ?だから、なんとなくクリスタルなんだよ。ちなみに『ニワトリは三歩歩けば忘れる』っていうことわざあるよね。あの言いまわし、俺は『バカは三歩歩けば忘れる』で充分だと思う。わざわざニワトリを擬人化するのは時間の無駄」
「なるほど」
「で、話を戻すけど、三寒四温。言い換えれば、三歩寒くなって、四歩温かくなる」
「言い換えられない方がわかりやすいな」
「そう?」
「うん」
「わかった。じゃあ、話を進めるけど、三寒四温。ということは、一つ温かくなったということだよね。つまり、冬から春への移行期。では、春から夏への移行期は?」
「三温四温?」
「違う。三温四暑。三日温かくて、四日暑くなる」
「頭がこんがらがってきた」
「じゃあ、夏から秋は?」
「三暑四寒?」
「神よ、この愚か者を救いたまえ」
「ふざけんなよ」
「まあまあ、逆ギレすんなよ。いいか、三暑四寒なら、秋を飛び越えて、夏からいきなり冬になっちゃうでしょ?」
「疑問形はもういいよ。どうぞ、ご勝手に」
「はいはい。そんなにふてくされないでよ。俺は優雅に季節の話をしてるんだからさ。秋は暑と寒の中間でしょ。つまり『冷』。だから、四冷三暑。で、秋から冬は四寒三冷。そうして最後に三寒四温と一巡するわけ。おしまい」
「ちょっと待てよ。お前、いまこう言ったよな。三寒四温→三温四暑→四冷三暑→四寒三冷→三寒四温。でも、途中で、三と四が入れ替わっていておかしくない?『三から四に移行していく』のがこの話のキモだろ。だから、こうなるはず。三寒四温→三温四暑→三暑四冷→三冷四寒→三寒四温

「ブー。違います。大事なのは『左の方が右より気温が低い』ということなの。だから、四冷三暑のところで四と三が逆転するわけ」

「そのルール、なんの役に立つの?」

こうして、代助との夜は更けていきます。