本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

できれば椎名林檎さんに主演してほしいドラマ 2

第一話は既発表です(2016年2月5日)

 ドラマ 「悲しみに参拝」 第一話あらすじ

雪原玲子35歳。大手化粧品会社勤務。
友達2人。
一人は大学時代からの友人ヒトミ。
共通の趣味は高円寺のビストロ「モンプチ」でハーブ料理を食べること。
もう一人の友達はユキヒロ。
年に4~5回、3人で高尾山に登る。
一人暮らし。
外来種の珍しい亀を飼っている。
20センチほど。部屋中をのそのそ歩き回っている。
名はない。
「私の部屋にいる亀は1匹だけなのだから名前をつける必要なんてない」。
玲子は自分の名前だって、できればなくなって欲しいと思っている。
名のない亀と名のない私。それでいい。
玲子は背が高くスレンダーで、いつもロングスカートをはいている。
たくさんの男たちが寄ってきた。
しかし、男たちには名前があった。
だから、断った。
今日のチキンは少し火を入れすぎだった。
二人でいるとき、大抵はヒトミが話して、玲子は聞き役だった。
いまヒトミは自分が好きなマンガのことを話している。
本当のことをいうと、玲子はヒトミの話に興味がなかった。
ただ、ヒトミは、玲子が疲れて帰りたがっているタイミングを的確に察することができた。
ユキヒロもそうだった。
玲子は部屋に帰ると、亀の甲羅に手をあて、目を閉じて、亀が自分の手のひらの外に出て行くまでそのままでいた。
長く触れることができた日は、その分だけ嫌なことが少なくなった気がした。
ある日、玲子達は高尾山に行った。
ユキヒロの運転するミニクーパーは路線変更してきたスポーツカーに追突され、反対車線に飛び出し、小型トラックと正面衝突した。
ヒトミは死に、ユキヒロは植物人間になった。
ベッドの上のユキヒロは、なぜか「幸弘」に変わってしまったような気がした。
肉体をもった男になってしまった気がした。
数ヶ月に1回しか会うことのなかった幸弘をどのくらいの頻度で見舞えばよいのか玲子は迷った。
加害者は田村という商社マンだった。
羽田のフライトに間に合わせるため無理な運転をしたのが事故の理由だった。
田村は東京にいるときは必ず幸弘の見舞いにきた(この部分の設定は非現実的?田村は服役してる?)
32歳。色白。精悍な顔立ちで身体は引き締まり、身長は180センチ近かった。
ある日、玲子が病室に入ると、田村は目を閉じて、幸弘の怪我がない部分、数少ない美しい肌に手をあてていた。
しばらくして玲子がいることに気がつくと頭を下げた。
玲子は幸弘がこんな風になって始めて、そして仁美があんな風になって初めて泣いた。
一通り泣き終えて田村を見ると、田村は玲子に怯えているようだった。
そんな田村を見て玲子は「タムラ」と呼んでみたい気がした。
そうしてタムラとモンプチとは違うレストランに行ってみたくなった。
高尾山とは違う山に登ってみたくなった。
玲子は目を閉じ、そうして、亀に手を当てるような仕草をした。

第1話 完

 

 ドラマ 「悲しみに参拝」 第二話あらすじ

玲子は大きなプロジェクトを任せられ、多忙な日々を過ごしている。
私生活では同期の長谷部とのアヴァンチュール
玲子はそういった行動を事故と結びつけなかった。
自分が本来あるべき姿に近づきつつあるように感じていた。
名のない亀と名のない私。
それは結局のところ退廃に過ぎなかった。
玲子は亀の甲羅に手を当て「ヒトミちゃん」とそっと呼んでみた。
玲子はヒトミと名付けられた亀を以前と同様に慈しみつつも、その甲羅に手を当てることはやめた。
ヒトミの前で長谷部と愛を交わすことすらできた。
幸弘を見舞う回数も減らした。
数ヶ月に1回しか会わなかった幸弘を頻繁に見舞うことは偽善だと思った。
久しぶりに幸弘を見舞ったのは初夏の美しい午後だった。
駐車場は草の匂いにつつまれていた。
病院のドアに手をかけた瞬間、彼女は長谷部と別れることを決めた。
築いて壊し、築いて壊し、その繰り返しによってしか自分は生きることができない。
自分が踏みつける瓦礫が変わるだけだ。
ベットに寝たままの幸弘はなにも変わっていなかった。
看護師から、田村が頻繁に見舞いにきていることを聞いたが、そのことにもさして感慨をうけなかった。
草の匂いを感じ取ったことの方が大きな変化のように思われた。
ある朝、ヒトミを眺めていた玲子は突然ティーカップを壁に投げつけた。
玲子はいくつもいくつも食器を壁に投げつけた。
それからヒトミを強く抱きしめ、自分がこれ以上支えられなくなったその名を奪った。
名前を失った亀は服を剥ぎ取られたかのように一瞬震え、それから玲子にしがみついた。
玲子はその足で幸弘の病院に駆けつけた。
ドアを勢いよく開けてみた。
長谷部とはとっくに切れていたし、いま自分が別れたいものは特になかったが、わざと大きな音を立ててみた。
看護師がやってきて田村が来ていると教えてくれた。
玲子は田村の顔を見て、これ以上この人を壊すことはできないと理解した。
自分が壊す必要のない存在がまだ残っていたことに驚いた。
田村は黙って頭を下げた。
玲子は看護師に窓を開けてよいかと聞き、認められた。
風がゆったりとカーテンを膨らませ、声が聞き取りにくくなったが、玲子はいつもありがとうございますと頭を下げた。
そう言いながら玲子は、自分が一体どのような立場でいまの発言をしたのだろうと不思議に思った。

第2話 完