本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

冬カゼが流行っていますよ

中村代助シリーズ6

「冬カゼが流行っていますよ」

酔っ払った代助は何度も何度も繰り返しました。

「代助さあ、わざわざ『冬』ってつけなくてもいいんじゃないの。今は冬だしさ」僕は言いました。

「へー、じゃあ今は冬だから冬からみれば夏カゼもただのカゼですか?」

「そうじゃなくて、冬のカゼは当たり前だからわざわざ『冬』をつける必要がなくて、夏のカゼは例外的だから『夏』を強調しているんじゃないの」

「カゼは例外なくカゼでしょ」

「お前、なにが言いたいの?」

「だからさ、夏カゼって言葉には、夏に風邪ひいちゃった〜。そうでなくても暑いのに熱までだして鼻水出して、ほとんど熱帯雨林だよ〜っていう不運感があるわけじゃない。不本意感っていうかさ。でも、結局のところカゼはカゼだからね、いつひいても不本意であることに変わりはないわけ」

「で?」

「お前だって冬にカゼひいても不本意でしょ?」

「代助さあ、お前飲みすぎだぞ」

「じゃあなにか、お前は春カゼとか秋カゼとかいうんですか?」

「お前の論法だとそういうことになるな」

「わかった、この議論、初めからやり直さない?『代助さあ、わざわざ『冬』ってつけなくてもいいんじゃないの。今は冬だしさ』ってところからもう一回言ってよ」

終わり