本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

新垣結衣さんのイメージに合わない寓話

夢をみない魚

 

ある時、タリマンゼが大きな湖の畔を歩いていると、ひとりの漁夫に出会った。

 

網には男の右足程の大きさの魚が数匹入っていた。

 

左足程の大きさと言わなかったのは、その時、タリマンゼがそう思わなかったからである。

 

タリマンゼが漁夫に名を尋ねると、ラマステコだという。

 

「夢みる魚」の意だ。

 

「いやそうではない。私は魚の名ではなくて、お前の名を知りたいのだ」

 

タリマンゼが言うと、ステコマラだと答えた。

 

「夢をみない魚」の意だ。

 

タリマンゼは言った。

 

「それはおかしい。お前はコテスラマであるべきだ」

 

コテスラマは「夢をみない男」の意だ。

 

漁夫は言った。

 

「タリマンゼ様、この魚たちをご覧ください。どれも目が飛び出しているのがお分かりでしょう。この目には、彼らがみた夢がたくさん詰まっています。ラマステコの肉は不味くてとても食べられたものではありません。価値があるのは夢が詰まった目玉です。それを私は家の離れにこっそり貯めておきます。そうして時期がくると、臼で引いて粉末にし、それを朝露で溶かして目薬にします。すると…」

 

我慢しきれなくなったタリマンゼが叫んだ。

 

「魚の夢をみるんだ!」

 

漁夫は言った。

 

「いいえ。私の目には私の姿がうつるのです。」

 

タリマンゼは頭を抱えた。

 

漁夫は言った。

 

「我、魚の目を得れど、魚の夢を得ず。ゆえにステコマラ『夢をみない魚』なり」

 

タリマンゼはいたく感心して言った。

 

汝の話はとらえどころがなさすぎて、ほとんど夢のようだと。

 

そうして、目薬を一滴でももらえないかと懇願した。

 

漁夫は悲しそうな顔をして言った。

 

あなたはまだスラマテコだと。

 

スラマテコとは「魚をみる男」の意だ。

 

タリマンゼはやや心外に思った。

 

「魚をみる男」とは、あまりにも世俗的な呼称ではないか。

 

漁夫は悲しそうな笑顔を浮かべて言った。

 

「スラマテコな者に幸あれ。私はステコマラになって、あなたの姿さえみることができません」

 

タリマンゼは混乱してたずねた。

 

「それではコテスラマとスラマテコの違いはなにか?」

 

漁夫は言った。

 

「私はステコマラですから、そういったことはわかりません」

 

タリマンゼはこれを聞いて深く頷き、世の中にはよくわからないものがあるなと深く感じ入った。