本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

『君のあとを追う僕からの手紙(再放送)』

お題「2017冬アニメ」

2017冬に上映される予定の僕が書いたアニメの脚本です。

せっかくの機会ですので再放送します。

 

『君のあとを追う僕からの手紙』

声優 啓太はできれば星野源、結衣はできれば若い頃の若尾文子

 

シーン1

5月6日

舞台は山口県。啓太と結衣は高校3年生。結衣は東京の大学に行く予定。

啓太 東京、危なくないか?

結衣 なんで?

啓太 芸能人とかたくさんいるぞ。

結衣 

啓太 俺、オヤジに、金ないから岡山より東の大学には行かせられないって言われた。

結衣 

啓太 岡山より西にしろよ。

結衣 ごめんね。啓太が結衣のこと心配してくれているのはよくわかるけど、なんだか我田引水的なアドバイスに聞こえるんだ。

啓太 俺はただ

結衣 私が好きなんでしょ?

啓太 俺には自分の気持ちがわからないんだ。

(啓太、大の字になり青空を見上げる)

結衣 自分の気持ちがわからない自分ってなんなんだろうね?

啓太 「自我」かな?

結衣 違うと思う。

啓太 

結衣 啓太さあ、青空は自分が青いことを知っていると思う?

啓太 俺、自分のことで精一杯だから考える余裕もない。

結衣 じゃあ、私のことは?

啓太 すごく考えてる。

結衣 それって矛盾してない?

啓太 思春期だから仕方ないよ。

結衣 そういうの、ちょっと気持ち悪いな。第一、私たちつきあってるわけじゃないし。

啓太 

結衣 ごめん。今の言い方キツかったね。

啓太 正直、傷ついた。立ち直れないかも。

結衣 だから謝ったじゃん。ごめんなさい。

啓太 結衣に謝られるとなんだか妙な気分だな。

結衣 なんで?

啓太 なんだか深い仲って感じがする。

 

シーン2

6月1日

教室の黒板に啓太と結衣の相合傘が書かれている。その横にはとてもじゃないがアニメ化できないような落書き。放課後。啓太と結衣はそれを無言で見つめている。

結衣 ひどすぎる。

啓太 

結衣 先生のところに行こう。

啓太 写真とってからにしない?

結衣 なんで?

啓太 結衣が嫌なら撮らない。

結衣 消そう。すぐ消そう。

(黒板消しを手に取る。啓太にも渡す)

啓太 消す前にちょっといいかな?

結衣 どうして?

啓太 脳裏に焼き付けておきたいんだ。

結衣 

啓太 覚えたよ。

(啓太、突然、結衣を黒板に押し付けてキスする)

結衣 バカ。啓太って本当にバカ!それ、必ず消しといてね。

(結衣、泣きながら教室を飛び出す。結衣の背中には黒板の相合傘が反転して写っている。啓太、ブレザーのポケットからスマホを取り出だす。しばらくそれを眺めた後、結局ポケットにしまい、黒板を拭き始める)

 

シーン3

6月15日

職員室に啓太と結衣が呼びつけられている。

教師 ねえ、私こんなことしたくないんだけどね、あんなものすごい落書きが毎日続くと、私も職務上、あなた達が潔白であること、確認しなくちゃいけないの。どう?まさかあなた達、あんなことしていないわよね?先生、あなた達のこと信じていいのよね?

結衣 大丈夫です。啓太君とは手をつないだことすらないし、第一つきあってません。

教師 啓太君は?

啓太 黒板に書いてあるようなことはしていません。

教師 じゃあ、なにしたの?

啓太 黒板ドンです。

結衣 啓太!

教師 啓太君、黒板ドンってなに?

啓太 えーと、

結衣 黒板にぶつかることです。

教師 私は啓太君にきいてるんです。

結衣 (啓太に小声で)黒板にぶつかること。

教師 結衣さんは黙ってなさい!

啓太 (決然と)黒板を叩くことによって、裏にいるシロアリを落とすことです。

教師 じゃあ、なんで啓太君は黒板の裏にシロアリがいることがわかったの?

啓太 はみ出ていたから。

教師 結衣さん、あなたもシロアリ落としたの?

結衣 そ、そうです。

教師 あなた達、なんかおかしいわね。でも、まあいいわ。少なくとも黒板に書いてあるようなことはしてないみたいね。わかったわ。帰ってよし!

 

シーン4

6月15日

結衣 先生、「帰ってよし!」だって(噴出す)。でも私、啓太のこと見直したわ。シロアリにはビックリした。

啓太 (得意げな表情で)キスのことばれたくなかったからね。

結衣 (表情が一転して曇る)ああいうの、もう二度としないでほしい。

啓太 

結衣 啓太の気持ちはわかってるよ。

啓太 

結衣 でもね、本当のことを言うとね、私、東京の大学に行くといっても、正確には東京の「大学病院」に行くってことなの。

啓太 え?

結衣 私ね、男になる病気になっちゃったの

啓太 は?

結衣 

啓太 (おずおずと)よくアニメとかである男と女がひっくり返っちゃうようなやつ?

結衣 違う。ただ、男になるの。

啓太 

結衣 

啓太 で、どうなるの?

結衣 死ぬの。

啓太 死ぬ

結衣 うん。男になって3ヵ月後に死ぬの。

啓太 そんな。

結衣 普通に死ぬの。

啓太 

結衣 

啓太 俺、なんて言っていいのかわからない。

結衣 (下を向きうなずく)

啓太 (長い沈黙の後)俺、シロアリの時みたいに頓知をきかせて結衣を救ってやる。その病気、なんていうんだ?

結衣 啓太

啓太   いいからすぐ教えてくれ。

結衣   HIKP。日本語では言いたくない。

啓太   HIKP。わかった。じゃあな。俺、結衣を救うためなら、なんでもする。なんでもしてやるからな。

結衣 

啓太 (あてもなく走り始める)

結衣 啓太、待って。

啓太 なんだ?

結衣 ドンキスして。

啓太 ここ(堤防)、ドンするものないぞ。

結衣 野原。野原にドンして。

(2人、堤防で抱き合う)

 

シーン5

8月18日

 (画面にはシーン1からシーン4までの名場面が映し出され、啓太の手紙が朗読される)

結衣へ

結衣さあ、俺、結局、お前のこと治す方法わからなかった。でもな、話をしたら、親父が東京に行く金を出してくれたんだ。土曜日に行くよ。待ってろよ。俺、必ずお前を助けるから。新幹線の中でいい方法を思いつくかもしれないぞ(笑)とにかく元気出すんだぞ。

 

最終回

8月23日

 (病室で啓太からの手紙を読む結衣。おそらく何度も読みかえしている。啓太、病室に飛び込んでくる)

啓太  結衣!

結衣  啓太!

(長い間、見つめあう二人)

結衣  マジかよ。マジで来たのかよ。

(長い間、見つめあう二人)

結衣  電話くれたら、少しは

(結衣、下を向き自分が履く男用サンダルを眺める)

啓太  結衣。はっきり言うよ。俺、なんて言ったらいいかわからない。ごめん。俺、結衣を治す方法どころか、結衣になんて言っていいのかすらわからない。

結衣(下を向いて)そうだよな。なんて言っていいかわからないよな。

(長い間、見つめあう二人)

結衣 握手でもするか?それとも(自嘲気味に)壁ドンでもしようか?俺たちがやったら相撲になっちゃうけど。

啓太 (突然、結衣を病室の壁に押し付けキスする)

結衣  ひげ、剃っておけばよかった

啓太 お前、あと何ヶ月だ?

結衣(しばらく間をおいて)2週間。

啓太 

結衣 

啓太 俺、これからすぐ山口に帰るよ。今から猛勉強すれば、もしかすると来春、医学部に入れるかもしれない。そしたら、お前みたいな奴、救えるかもしれない。

結衣(くしゃくしゃな笑顔で)もう1回、ドンできる?

(病室から見える青空。蝉の声。ジ・エンド)