本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

お題スロットに挑戦8

お題「私の師匠」

私の師匠は傷心隊見学(しょうしんたい・けんがく)。

見学師匠の弟子になったのは16の時だった。

私は8歳の時から師匠のところに日参し、弟子にして欲しいと嘆願していた。

兄貴が通っていた中学の文化祭で見た見学師匠にすっかり魅せられていたのだ。

「おーい、そこの若い衆、ちょっとこっちにきてくれねえか」

「なんでい、なんの用だい」

「背中を掻いてくれねえか」

まあ、可笑しかったのなんの。

でも、私が晴れて師匠の弟子になり、傷心隊盗聴(しょうしんたい・とうちょう)という芸名を頂いた時、師匠の芸は荒れて、往年の粋な落語家の面影は全く残っていなかった。

「おーい、そこの若い衆、ちょっとこっちにきてくれねえか」
「なんでい、なんの用だい」
「背中の右上の方を掻いてくれねえか」

私は8年もの時を無駄にしたのだった。