本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

PXT宣言

PXTの祖、シュタイアー氏は無学であるが、無学なりに文章を書くことができる男だったし、彼自身それを誇りに思っていた。

よい機会なので、彼が最初の妻ジャスリーンに送った手紙をここで紹介しておこう。

大輪の、でも花弁は小さな僕のジャスへ                      もう秋だね。昨日はロジャーとリバプールまでドライブしてきた。不潔な町だよ。神よ、彼らを許したまえ。でも一店だけとっても素敵な雑貨屋があったから、君にブローチを買ってきた。貝の柄のブローチなんだけど、君によく似てるんだ。日曜日にもって行くからね。W.S

文中の「貝の柄のブローチ」については、これまで「貝殻のブローチ」とされていたが、後述する直筆の発見により訂正されている。

なお、シュタイアー氏はアマチュアのムール貝研究家としても知られ、次のような詩を残しているのでせっかくだから紹介しておこう。

ムール貝は夜食にむかない

こいつはあくまでオードブル

あくまであなたがメインです

この詩は素人目にもへたくそである。

しかし、このスタイルは40年後にかかれたPXT宣言第2条「われわれは中途半端に比喩を用いなくてはならない。バカにも天才にもわかるように」と直結しているところが興味深い。

脱線が続き恐縮だが、昨年発見されたシュタイアーの1972年10月頃のノート(Note1972-4)に書かれてあった詩も一編紹介したい。

さあさあ、ワルツの時間だよ

踊れ、輪になれ、恋をささやけ

奴の皿からムール貝とか旨いものをくすねちゃえ

この詩は下手を通り越してバカである。最後の一説にはむき出しの食欲しか見出せない。いくらシュタイアーがムール貝研究家だったからといって身もふたもなさ過ぎる。

もちろんシュタイアーはこの詩を発表することなど考えてもいなかった。

しかし、どちらにせよシュタイアーにはこれほど無意味な詩を書かせるなにかがあったのだ。

PXT宣言第17条を思い出そう。

われわれは無意味なことを書くことを恐れない。なぜなら恐れるほどのことではないからだ

読者諸君。皆様方は私の注釈にそろそろ飽きてきたかもしれない。

しかしせっかくの機会だから、私は私なりに書きたいことがあるのだ。

ご承知のとおり、今まで普及してきたのはオックスフォード版のPXT宣言である。

しかし昨年、Note1972-4とともにシュタイアー直筆の草稿、いわゆるケンブリッジ版が発見された以上、今後はケンブリッジ版を定本とすべきであろう。

たとえば第9条。上がオックスフォード版。下がケンブリッジ版。

人類は絶対にわかりあえない。なぜなら、そもそも知らない人がたくさんいるから

人類は絶対にわかりあえない。なぜなら、僕は家で庭いじりしているほうが好きだから

ここで問題が生じる。

我々PXTはオックスフォード版にしたがって、世界から少しでも知らない人を減らすことを推奨してきた。

その象徴が渋谷スクランブル交差点ツアーである(渋谷スクランブル交差点では効率よく大勢の人間を見ることができる)。

しかし、ケンブリッジ版の登場によって、シュタイアーが引きこもり(庭弄り)を肯定していた可能性が生じてきたのだ。

したがって、PXTにおいては、ケンブリッジ版をベースとしつつ、オックスフォード版も参考にした新ケンブリッジ版を策定することとした。

この作業は山田洋一氏が中心となり、3年の時を要した。

ここに紹介するのがまさにそれである。

終わり