本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

どうしても武田真一さんに読んでもらいたい童話

オラは夜明け前、こっそりとその船(ジョージア号というぶったまげるほど大きな船だ)に乗り込んで、小麦袋の間に身を隠していた。

すると「ターキー(その名前の由来を説明しようとすると、ニューオリンズに着いちまうくらい長い話になるから省略するよ)」がやって来て、箱から一本ぶどう酒を掠め、飲み始めた。

そうして、こんな独り言を呟き始めた。

ジョージ様ときたら全くもって良いお方じゃ。俺がこうやってぶどう酒を掠めても、酒臭い息で皇太子様とポーカーをしても、なにも言わねえ。とはいえ、俺がなぜ『ターキー』と呼ばれているのかを知ったら、たんまり小麦の詰まった袋に俺を縛り付けて川に投げ込んでしまうだろうがな」

オラはもう我慢できねえ。

読者のみなさん、ニューオリンズに着くまで俺の話を聞いてくんろ。

実はターキーっていうのは、本当のターキーじゃないんだ!

ガタン!

興奮したオラは音を立ててしまった。

「そこにいるのは誰だ?」

バレちまったなら仕方ねえ。

「ジョンだよ」

「ジョン?」

「そうさ、ターキーの息子のジョンだよ。あんたに殺されたターキーの息子だよ」

ターキーは幽霊でも見たような顔をしていた。

そしてしばらくして、ゆっくりした口調で話し始めた。

「お前になにがわかる。お前のオヤジがどんなにひどい野郎だったか。数奇な運命に翻弄されて俺が『ターキー』という名前を騙らざるをえなくなった皮肉と屈辱がわかるか?」

オラは言った。

「長い話になるからさっき省略したよ。まあいいよ。好きなだけぶどう酒を飲めばいいさ。その代わりに俺をお前の部屋に隠してくれよ。いいだろ?俺があんたの名前の由来をジョージさんに話したら、あんたは地獄行きだからな」

「わかったよ。それにしてもお前さん、ずいぶんと大きくなったなあ。ターキーが死んだのが、えーっと5年前だから、おい、ちょっと計算が合わねえぞ」

「ああ、父ちゃん」

「なに?」

「父ちゃんって言っただけさ」

「お前もしかすると…」

「いいじゃないか。オラは父ちゃんと一緒に皇太子様の世話をしながら世界を自分の目で見てみたいんだ」

「息子よ」

父ちゃんは泣いていた。

「でも、お前と俺の関係をジョージ様に説明するとなると、どうしても『ターキー』の話は避けられないぞ」

「そりゃやべえ!」

そう言って俺はミシシッピ川に飛び込んだわけさ。