本屋大賞はとってない

本屋大賞はとっていません

スカンジナビア

スカンジナビア半島の伝説。

早朝、いつもと同じように男は家を出て港に向かい、漁に出た。
タラ漁である。
船員が8名の小さな船だから、持ち帰られる魚の量には限度があり、大漁の日は午前中のうちに帰ってこられる。
男には女がいた。
その女には午後、男と会えない事情があった。
男も女も毎朝大漁を祈り、願いが叶った日には、正午の鐘まで愛し合った。
ある日、女は男に別れのキスをしながら、彼のポケットにそっと四つ葉のクローバーを入れた。
男は帰宅して、それに気づいた。
女への愛しさで胸がいっぱいになった。
四つ葉のクローバーを母の形見のブローチに入れて首にかけた。
翌日、嵐で船が転覆し、男は死んだ。
四つ葉のクローバーの花言葉は「私のものになって」だった。
いま、男は上機嫌な母親と語り合いながら、無意識にブローチをいじっている。
女のことは依然、愛している。
女はクローバーの花冠を作り、海に投げた。
その中に四つ葉は含まれていなかった。